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ペダルを漕いでいれば何処まででもいける・・・そう思っていた時期が私にもありました。

人類はピアノ鍵盤の呪縛から解放されるべき

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piano

人類の音楽の歴史の中でも長い間主役の座に居続ける楽器演奏のためのインターフェース、それがピアノ鍵盤です。
電子楽器が一般的になった今においてもその事実は変わりません。

ですが、そんなピアノ鍵盤も完璧な楽器演奏のインターフェースかというと、そうとは言い切れないでしょう。
まだ改善の余地はあるはずです。

人類は音楽の発展のため、そろそろピアノ鍵盤を捨てて次のステージに進むべきではないでしょうか。

ピアノ鍵盤の歴史

白鍵と黒鍵が並んだ誰もが見覚えがあるであろうピアノ鍵盤ですが、なんだか有史以来ずっと存在しているようなイメージがあります。
では、実際にはピアノ鍵盤はいつ頃に現れたものなのでしょうか。

オルガンの登場

ピアノ鍵盤の登場はピアノが発明されたと同時・・・ではありません。
ピアノ鍵盤が最初に採用されたのはピアノではなくオルガンで、オルガンの進化の過程で生まれました。

本記事では白鍵と黒鍵が並んだ音楽演奏用鍵盤のことを「ピアノ鍵盤」としていますが、このピアノ鍵盤が最初に採用されたのはピアノではなくオルガンです。

オルガンが生まれたのは2000年以上前のこと。
発音原理は今と同じくパイプに空気を流し込み、鍵盤によって空気の流れをコントロールする弁を開閉することで音を出していました。

Organist and horn player, the gladiator mosaic at the Roman villa in Nennig, Germany

オルガン発明当時は水力でパイプに空気を送風する「水オルガン」といわれる物でしたが、水力では安定した送風が難しいため、時代が進むにつれてふいご、蒸気機関、電力と動力が変遷していきました。

そして、オルガンを演奏する鍵盤もパイプへの送風機構の変化と併せて鍵盤の方も時代とともに変化していきます。
オルガン発明当時は白鍵と黒鍵の区別のないものでしたが、技術の進歩や音楽理論の確立によって現在の「ピアノ鍵盤」の形になったのは15世紀頃と言われています。

以上のように「ピアノ鍵盤」はオルガンが発祥であり、本来なら「オルガン鍵盤」というべきなのでしょうが、本記事では一般的なイメージを優先して便宜上「ピアノ鍵盤」と表記することにします。

ピアノ鍵盤が一般的になった理由

オルガンの発展とともに進化して現在の形になったピアノ鍵盤は、その後様々な楽器で採用されることとなります。
クラヴィコード、ハープシコード、フォルテピアノ(現在のピアノの直系の先祖)、そして現在のピアノに至るまで様々です。

オルガン以降の楽器でも鍵盤が採用されたのは、鍵盤という機構が発音体を鳴らすのに都合が良かったからです。
オルガンは上項の通りパイプの弁を制御する仕組みですが、クラヴィコードやハープシコード、フォルテピアノは発音体となる弦を鍵盤とつながっているハンマーで弾いたり叩いたりすることで音を鳴らしています。
つまり、発音体や発音方式に違いはあれど、鍵盤に対応した発音体を1音1音ずらっと並べた楽器が鍵盤楽器なわけで、根本的な発想は変わっていないのです。

ピアノ鍵盤を用いた鍵盤楽器は発展を続け、その発展と同時にピアノ鍵盤楽器の奏者もノウハウを蓄積していきます。
そしてついには音色と表現力に優れた現在の形のピアノが生まれ、楽器の王様としての地位を現在に至るまで磐石なものとしてます。

こうしてピアノという楽器が鍵盤楽器演奏者に定着し、やがてバイエルやツェルニーのような音楽学習の体型が整っていきました。
長い時間をかけて、ピアノ鍵盤は楽器においてのスタンダードとなっていったのです。

現在の楽器はピアノ鍵盤である必要はない

古来より在り続けるピアノ鍵盤は現在に至るまで受け継がれ、現在の楽器であるシンセサイザーなどの電子楽器にも採用され続けられています。

ですが、電子楽器のピアノ鍵盤は単なる発音のトリガーとなるボタンでしかありません。
電子楽器には発音のための機構が電子回路で構成されているため、オルガンやピアノのような大がかりな装置は無用です。

シンセサイザーの誕生当時には従来の鍵盤楽器と同様、シンセサイザーは部屋の大半を占めるような大きさでした。

Moog synthesizer

ですが、そんなシンセサイザーも現在は卓上サイズやポケットサイズ、さらにはソフトウェアになっていたりと、時代を経るにつれてコンパクトになりました。

Some of my synths

ピアノのように強弱の表現をする機能についても、発音と同じように電子回路で実現されています。
技術の進歩によって、楽器はどんどんコンパクトにまとめることが可能になったのです。

にもかかわらず、ピアノ鍵盤だけは相変わらず無駄に大きいままなのです。
これをピアノ鍵盤の呪縛と言わずなんと言いましょうか。

ピアノ鍵盤に変わるものは何だろうか

長い時間を経てピアノ鍵盤演奏者の間に定着しました。
いや、しすぎてしまったと言っていいでしょう。
今も次々と新しい楽器が生まれてはいるものの、そのインターフェースはピアノ鍵盤をダウンサイジングしたものやピアノ鍵盤を意識したデザインばかりです。

確かにピアノ鍵盤のデザインは白鍵と黒鍵によってスケールを外れていないかがわかるものとなっています。
クラシカルなピアノにおいてはもちろん上記はハ長調やイ短調に限った話ですが、電子楽器なら設定次第で簡単に移調できるため、ハ長調やイ短調以外でも白鍵のみを弾けば音を外すことはなくなります。
ですがこれはメジャースケールとナチュラルマイナースケールに限った話であり、その他のスケールに関しては配置を暗記しなければなりません。
それを考慮すると、ピアノ鍵盤はまだ完璧なインターフェースとは言えないのです。

ならば、ピアノ鍵盤に取って代わるインターフェースは何かと問われたら、私も明確な答えを用意することはできないでしょう。
あるとすればフレキシブルに音階をアサインできるパッドをたくさん配置したもの、具体例を挙げるならAbleton Push 2のようなものでしょうか。

これからの音楽がどう発展していくかを予想するのは難しいですが、少なくともピアノ鍵盤が絶対的な存在ではなくなってくるでしょう。
なにはともあれ、今後の音楽がどんな道を歩むのかが楽しみです。