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生楽器をリアルに再現かつ軽量な物理モデリング音源を紹介

piano

今や音楽制作に欠かすことのできないソフトウェア音源、その中でもピアノやストリングスなどの実際の楽器を再現する類のものは重宝します。

音楽制作に当てられる予算と時間が許すなら本物の楽器をレコーディングするのが一番でしょうが、そうもいかないのが現実。 アマチュア、プロ問わず、生楽器のソフトウェア音源に頼るシーンは多いでしょう。

さて、こういった生楽器を再現するソフトウェア音源のほとんどは、実際の楽器をレコーディングしたサンプル素材を元に演奏するものがほとんどですが、中にはプログラムによって楽器の物理的な挙動を再現する物理モデリング音源と言われる音源があるのをご存知でしょうか?

物理モデリング音源の特徴

物理モデリング音源とは実際の楽器の発音原理や共鳴などの音に関する物理的な現象をプログラムでモデリング、つまりプログラムで仮想的に楽器そのものを作り上げて奏でる方式の音源です。

物理モデリング音源の特徴は以下の通りです。

音色の変化が豊か

物理モデリング音源は楽器そのものを作り上げて奏でるため、音の大小による音色変化はもちろん、様々な奏法の再現をも可能にします。 また、その変化も滑らかです。

実際の楽器をレコーディングしたサンプル素材を元に発音するサンプリング音源は、サンプリング素材に収録した以上のことは基本的にできません。

音色の編集範囲が広い

物理モデリング音源の音色編集は楽器そのものを編集します。 例えば楽器の形状や材質そのものを変えることだってできます。 また、楽器の素材の経年劣化も再現することができ、同じ楽器の同じ演奏でも異なる表情を見せることができます。 なので極端な話、大昔から存在する人間が弾けない巨大な楽器の音を作り出すことも可能だったりします。 そうは言っても、大抵は音が良くなるように作られている現存の楽器をモデリングすることになるのですが。

サンプリング音源は収録素材の音から大きく変化させることは難しいでしょう。 大体がエフェクターで変化させられる範囲でしか編集できません。

小容量&軽量

物理モデリング音源はサンプリング音源よりもずっと小容量かつ軽量です。

近年のサンプリング音源は、そのクオリティ向上と引き換えに大容量化が進みました。 専門の音源だと数十GB、数百GBのストレージ容量を確保しなければなりません。 また、そんな大容量のファイルを扱うだけのスペックがコンピューターに求められます。

それに比べて、物理モデリング音源の容量はわずか数十MB、コンピューターに加わる負荷も大容量サンプリング音源ほどではありません。

物理モデリング音源の紹介

一言に物理モデリング音源と言っても、再現している楽器は様々です。 ここではメジャーなジャンルの楽器かつクオリティーの高い音源を紹介していきます。

ピアノ

最初に紹介するのは楽器の王様ことピアノの音源から。 ピアノの物理モデリング音源といえばModartPianoteqでしょう。

MODARTT | Media Integration, Inc.

Pianoteqは様々なピアノをモデリングした物理モデリング音源で、現在のステージピアノから古楽器に分類されるピアノまでラインナップされています。 また、グランドピアノやアップライトピアノだけでなく、エレクトリックピアノやクラビネット、さらにはヴィブラフォンやハープまでをもモデリングした音色をアドオンで追加できるようになっています。 もはやなんの音源なんでしょうね。

気になるPianoteqのプログラムのサイズはわずか40MB、それでいてその音質は数十GBの大容量サンプリング音源すらも凌駕すると評判です。

ギター

Applied Acoustics SystemsSTRUM GS-2、こちらはアコースティックギターとエレクトリックギターをモデリングした物理モデリング音源です。

A|A|S - Strum GS-2 | Media Integration, Inc.

STRUM GS-2の特徴として、ギター自体のモデリングはもちろん、奏法もちゃんとシミュレーションしてくれます。 ギターならではのボイシング、コードストロークなどなど、そこまで難しく考えなくても自動的に再現してくれます。

ベース

ベースの物理モデリング音源には期待の新星、IK MultimediaModo Bassが挙げられます。

IK Multimedia | MODO BASSをご紹介します!

Modo BassはSampleTank、Amplitube、T-racksなどの数々の定番製品でおなじみのIK Multimediaが、8年の歳月をかけて開発したエレクトリックベースの物理モデリング音源で、代表的な12種類のベースを再現するベース音源です。 Modo Bassでは元となったベースの再現度の高さはもちろん、そこから弦やピックアップの交換も可能となっています。

Modo Bassはエレクトリックベース音源なので、ベースアンプも合わせて必要になりますが、その点は心配ご無用。 同社のアンプシミュレーターであるAmplitubeのベースアンプがビルトインされているので、別途用意する必要はありません。

管楽器

管楽器の物理モデリング音源といえば、Sample Modelingがラインナップする製品群です。

Sample Modeling - Brass & Woodwinds Bundle | Media Integration, Inc.

ラインナップは以下の通り。

  • The Trumpet 3:トランペット音源
  • Trombone 3:トロンボーン音源
  • French Horn & Tuba 3:フレンチホルンとチューバ音源
  • Saxophones:ソプラノ、アルト、テナー、バリトン全て備えたサックス音源
  • The Soprano & Bass Clarinets:クラリネット音源
  • Double Reeds:オーボエ、イングリッシュ・ホルン、バスーン、コントラバスーンなどのダブルリード音源
  • Flutes:フルート、ピッコロ、アルト・フルート、バス・フルートの4種を備えたフルート音源

こういった楽器は特にクラシック音楽の場では繊細な表現を求められるものですが、Sample Modelingの物理モデリング音源はそういったきめ細かい表現をこなすことに定評があります。

弦楽器

Sample ModelingThe Violaは上記の管楽器の物理モデリング音源を開発したSample Modelingが作り上げたビオラ音源です。

Sample Modeling - The Viola | Media Integration, Inc.

管楽器もそうですが、弦楽器もまた音楽の中で求められる奏法のバリエーションが多く、そのために必要な奏法を網羅した管弦楽器のサンプリング音源は数十GBの容量に膨れ上がってしまうものです。 ですが、物理モデリング音源のThe Violaは10MB、それでいてリアルな音であらゆる奏法を奏でることができます。

今の所まだビオラしかラインナップされていませんが、そのうちヴァイオリンやチェロ、コントラバスなども揃ってくるでしょう。

弦楽器音源にはこのほかに、Applied Acoustics SystemsString Studio VS-2という物理モデリング音源もあります。 こちらは一つの楽器だけでなく、あらゆる弦楽器を再現する音源です。

ですが、リアルに楽器を再現できるというものでもないらしく、製品ページに

ただ、1音をならした時に「生楽器に似ている」サウンドが欲しいなら、他のPCMサンプラーをお使いください。

と書かれているように、リアルさを追求するためでなく、あくまでストリングスシンセサイザー的な利用を想定しているようですね。

A|A|S - String Studio VS-2 | Media Integration, Inc.

ボーカル

さすがにボーカルの物理モデリング音源はないと思うでしょうが、実はあるんです。

その名もCevio Creative Studio

CeVIO Official Web

ボーカル音源というと多くはVocaloidを想起するでしょうが、こちらは元となるボーカル素材をいくつもサンプリングしたライブラリを用意し、歌詞に合わせてライブラリの音を組み合わせるサンプリング音源です。

一方のCevio Creative StudioはVocaloidのようなライブラリを用意せず、元となるボーカル素材を数値化し、そのデータからボーカル音声を作り出す物理モデリング音源です。 詳しい仕組みは以下ページの「HMM-Based Speech Synthesis」の論文を読んでみるとわかった気になれます。

Keiichi Tokuda: selected publications in Japanese

本物やサンプリング音源と併用しよう

最近の物理モデリング音源は真に迫るクオリティがありますが、やはりどうしても違和感を拭えない部分が出てくることもあります。 バックコーラスに紛れるとそれほど気にならなら無かった部分も、ソロパートとなると違和感が目立ってくる、そうなると最悪楽曲の雰囲気をぶち壊すことにもなりかねません。

そういう部分では物理モデリング音源にこだわるのを止め、サンプリング音源を使ったり本物の楽器をレコーディングしてしまったほうが良い結果になることもあります。 これは別に物理モデリング音源に限った話ではないですね。

物理モデリング音源、サンプリング音源、そして本物の楽器。 みんな違って、みんないい。 適所適材を見極めて、使い分けましょう。