musirak.com

音楽制作に関することをメインに、他には趣味の話もぼちぼち書いているブログです。

日本はヒップホップの本場になりつつある

photo by moritz_siebert

ヒップホップの発祥は1970年代、クール・ハークが2枚のレコードを用いてブレイクを巻き戻しつつ再生し続けながら、そこにラップを入れるというようなアイデアを端としました。 それは一時のブームに収まらず、今日まで存続し続けています。 また、ヒップホップでは既存の音楽をサンプリングして音楽を再構築する手法がよく用いられますが、それらは既存の音楽の魅力を再発見するという意味で、音楽の世界に恩恵をもたらしてきました。

日本においても1980年代よりヒップホップが輸入され始め、今日に至ります。 ですが、ヒップホップ自体のマイナーさと、ヒップホップにつきまとうアングラなイメージのせいか、大衆的な音楽とはいえないでしょう。 ただし、ヒップホップのエッセンスはちゃんと日本の大衆音楽にも取り入れられていますが。

そんなヒップホップですが、現代の日本においてはヒップホップが隆盛する土壌が出来上がってきているのではないかと私は考えています。

ヒップホップは文化

ヒップホップとは音楽、ダンスなどの芸術活動のみを指す言葉ではありません。

「ヒップホップとは生き方だ」という言葉をKRS-ONEが残している通り、音楽、ダンスの他に、アート、ファッション、思想など、生活を取り巻くあらゆるものが内包されています。

元々、ヒップホップはアメリカの貧困層から生まれた文化です。 彼らの住む場所はストリートギャングが蔓延り治安が悪いものでしたが、そういう問題を無血で解決しようとした中でヒップホップの文化は形成されてきました。 また、ヒップホップミュージックのラップには反社会的な表現や言論が多いことも特徴ですが、これらも貧困にあえぐ彼らがそういった閉塞感を打破するために、自分たちの意見を音楽にのせて世間に届けようとした結果でしょう。

元陸上選手の為末大氏は上記のように日本のヒップホップを批判しています。 確かに、本場のヒップホップは本場のバックグラウンドがあってこそなので、裕福な日本人がヒップホップをプレイしたとしても、所詮は真似事にすぎないというのは的を得ています。

日本の若者の貧困と未来への閉塞感

では、日本のヒップホップは今でも本場の猿真似に過ぎないのかというと、答えはNoです。

なぜなら、日本の若者を取り巻く環境もまた、ヒップホップが生まれたアメリカのスラムのように悪化の一途を辿っているためです。

日本人は裕福だとか、景気は上向きだとか言われていますが、多くの人達はそういう恩恵を受けていません。 日本人は裕福というデータも、一部の富裕層が全体の平均を底上げしているためであり、多くの裕福でない人が認知されずにいるのが現実です。

1990年代にバブル崩壊が起こってからずっと不景気だという認識の人も多いでしょうが、実際のところは2000年代に入ってからリーマン・ショックに至るまで景気は上向きでしたし、現在もアベノミクス効果により景気はいいと言われています。 ですが、そういった恩恵を得ているのは大企業や富裕層ばかりで、一般人の所得に反映された試しがありません。

それにともなって富の固定化も進んでいます。 よく語られるのは親の所得によって学力が決まってしまう問題があるでしょうか。 これが子の代孫の代と受け継がれていくと、世代が進むに連れて下層民は貧困からの脱却が困難になってきます。 一億総中流の時代はすでに終わり、富裕層と貧困層にくっきりと線引される時代が近づいています。いや、今がそうかもしれません。

今の若者たちの大半はというと、建築法、消防法などの観点から住居に相応しくない脱法ハウスに住まい、近い将来すら保証されない非正規雇用、心身の健康を損なう長時間労働やパワハラが横行するブラック社会に揉まれて心身をすり減らされる運命にあります。 奨学金の返済に日々怯える者もいるでしょう。

こんな生活から脱却したくとも、金がない、学がない、知恵がないで八方塞がりな状況です。 ん?この状況ってヒップホップが生まれた本場の環境に近いのではないでしょうか。

つまり、日本の若者の貧困と未来への閉塞感、これこそが日本がヒップホップの本場になりつつある所以です。

果たして、日本においてヒップホップが根付く土壌が形成されるというのは良いことなのでしょうか。

あとがき

自分があまり詳しくない音楽に関することを調べるとき、先日紹介した「世界の音楽の大図鑑」はホント便利ですわ。

www.musirak.com

世界の音楽大図鑑

世界の音楽大図鑑

  • 作者: ロバート・ジーグラー,スミソニアン協会,金澤正剛
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2014/10/25
  • メディア: 大型本
  • この商品を含むブログを見る