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musirak.com

音楽制作に関することをメインに、他には趣味の話もぼちぼち書いているブログです。

TR-808やTR-909が未だに愛されている理由

photo by Martin Terber

音楽制作をしている人やダンスミュージックに興味がある人の中には、TR-808TR-909という単語にピンとくる方が多いかもしれません。

TR-808とTR-909は共に日本のRoland社が販売していたリズムマシンです。 リズムマシンとは音楽の重要な要素のひとつであるリズムを作り出す機械で、キックドラム、スネアドラム、ハイハット、シンバルなどのドラムパートを自動的に奏でてくれます。

TR-808とTR-909が販売されていた時期は、なんと30年以上前に遡ります。若いミュージシャンの中には名前は知っていても本物を見たことがない方もいることでしょう。

なぜ、そんなにも古い機材が未だに様々なミュージシャンに愛用されているのでしょうか。

TR-808とTR-909について

TR-808

photo by jochenWolters

「やおや」の愛称で知られるTR-808はアナログ回路の音源を搭載したリズムマシンです。

リズムのパターンの作成は横一列に並んだランプ付きのボタンのそれぞれを16部音符に見立て、それらを押してランプを点灯させるというものです。 パターンを再生するとランプを点灯させたタイミングで音がなる仕組みです。

この方式は作成したパターンの視認性もよく、当時は画期的な機能だったようです。

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2016年から2017年にかけて世界的にブレイクしたピコ太郎の曲のでもTR-808の音色を聞くことができます。

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TR-909

photo by ign

TR-808の後継機として登場したのがTR-909です。 音色のリファインとMIDIへの対応をはじめとする新機能を盛り込んでの登場でした。

ところが、技術の進歩によって本物のドラムの音をサンプリングしたリズムマシンが主流になっていることもあり、アナログ回路とサンプリング音色を折衷したTR-909は他のリズムマシンよりもリアルさが劣っていると評価されてしまいます。 残念ながら時代の波に乗りそこねてしまったわけですね。

かくしてTR-909は駄作の烙印を押され、市場ではゴミ同然に扱われることになってしまいました。

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黒人ミュージシャンによる再評価

かつては評価されたものの陳腐化して中古ショップに並ぶ事になったTR-808。 駄作の烙印を押され、二束三文で投げ売りされていたTR-909。 両者はこのまま音楽市場での役目を終えるところでした。

ところが、貧しい生活の中で音楽活動をしていた黒人ミュージシャンたちの手によって、TR-808とTR-909は再び日の目をみる事になります。 彼らはTR-808やTR-909のリアルなドラムの音ではないという「個性」を再発見し、それを自身の音楽に取り入れていきました。

このムーブメントは瞬く間に広がり、ダンスミュージックの分野では必要不可欠の存在となりました。 そして、今でも当時からの根強いTR-808やTR-909のファンがいます。

イギリスの808 Stateというバンドは、自分たちのバンド名に「808」を入れるほどの熱の入れようでした。

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かくしてTR-808やTR-909は現代のミュージックシーンに無くてはならない存在となったわけです。 特にダンスミュージックにおいては定番のリズムマシンとなり、そういった曲を日常的に聞いていればTR-808やTR-909の音を聞かない日はないと言っていいでしょう。

そして定番へ

TR-808やTR-909の音は様々なシンセサイザーやリズムマシンのプリセットに聞くことができます。 「TR」とか「808」とか「909」という名前が付いていたら、それがTR-808やTR-909の音色です。

TR-808やTR-909を模倣したハードウェアやソフトウェアも数多くあります。

ハードウェア

TR-808を模したハードウェアではacidlabのmiamiが有名です。

Acidlab / Miami / Fukusan Kigyo

また、モジュラーシンセという自分で好きなシンセサイザーのモジュールを組み合わせるシステムでも、TR-808を再現したモジュールがあります。

ソフトウェア

TR-808やTR-909を模したソフトウェアではD16のNEPHETONやDRUMAZONが有名です。私もこれらを持ってます。 これらは特にTR-808やTR-909の再現度が高いと評判です。

www.crypton.co.jp

www.crypton.co.jp

思想を受け継いだマシン

TR-808やTR-909が愛された理由は音だけでなく、リズムを構築しやすい操作性にもありました。 その操作性もまた、音色とともに模倣される事がしばしばです。

この中でもTR-808やTR-909の思想を受け継ぎ、さらに発展させたリズムマシンやシンセサイザーを展開するメーカーにElektoronがあります。 Elektronについては以下の記事にまとめています。合わせてご覧ください。

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Roland公式の復刻モデル「TR-8」

www.roland.co.jp

これまでに盛り上がったTR-808やTR-909でしたが、本家本元のRolandがTR-808やTR-909の現代版を復刻させることはありませんでした。 RolandはTR-808やTR-909を復刻させる気はないのかと散々言われてきたほどです。 そのため、TR-808やTR-909を使いたいミュージシャンは他のメーカーの代替機種を使ったり、中古で手に入れたTR-808やTR-909を修理しながら騙し騙し使っていました。

そんな中で、TR-808やTR-909の登場から30年後、TR-808やTR-909はRoland自身の手によってTR-8として復刻しました。

ただし、オリジナルはアナログ回路で構成していた音源はモデリングでの再現となっております。 TR-8は操作性の向上とコンピューターとの連携が図られているので、今から買うなら断然こちらの方がオススメです。

TR-808やTR-909のオリジナルの音にどうしても惹かれる、どんな困難が待ち受けていてもオリジナルが欲しいのでなければ、今ならTR-8を選んだほうが懸命です。 オリジナルのTR-808やTR-909はアナログ回路ゆえに音色に個体差があるので、せっかく手に入れた機体から望んだ通りの音が出ないとがっかりすることになるかもしれません。 また、古さゆえにメンテナンスが欠かせないので、自分でメンテナンスや修理、改造ができる技術があるか、それらを頼める人が身近にいる人でないと使い続けるのか困難でしょう。

そして、TR-8のメリットとしてTR-707TR-727、さらにTR-606というRolandのTRシリーズの音色をも再現できるエクスパンションがあることです。 これはモデリングマシンならではでしょう。

7X7-TR8 Drum Machine Expansion for TR-8

このエクスパンションを導入すると、TR-808とTR-909の音色の他に、TR-707、TR-727、TR-606の音色とTR-808とTR-909の別バリエーションの音色が使えるようになります。 しかも、それらの組み合わせは自由自在。 TR-808のキックとクラップにTR-909のスネア、パーカッションにはTR-727というような、オリジナルのハードウェアではそれぞれ別に用意しなければならなかった組み合わせが、エクスパンションを導入したTR-8なら1台でできるようになります。