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musirak.com

ペダルを漕いでいれば何処まででもいける・・・そう思っていた時期が私にもありました。

音楽の著作権の範囲はどこまで広がるのだろうか

音楽 音楽-法律

photo by michael_d_beckwith

音楽の著作権について新たな動きがあったようです。

nikkan-spa.jp

ここで取り上げられている裁判はアメリカにて曲のフィーリングが似ているということを争点とした裁判です。

従来までは音楽の著作権に関して争点になる部分はメロディや歌詞でありました。 コード進行やギターなどのリフが似ているために訴えた事例もありましたが、それらには創造性があるとはいえないとして退けられてきました。

この裁判もまた創造性がないとして原告側が退けられるだろうと思うでしょうが、なんと驚くことに原告側が勝訴してしまったのです。

こういった事例ができてしまうと、記事中でも指摘があるTPPで議論されている「著作権の非親告罪化」が適用されたとき、日本の音楽文化にも多大な影響があるでしょう。

ただ、この記事中には争点となった参考曲もなければ、裁判の結果だけを切り取った上で結論がなされていて短絡的だと感じたので、もうちょっと視点を掘り下げてこの事件を見て行きたいと思います。

事の発端

ロビン・シックのBlurred Linesがマーヴィン・ゲイのGot To Give It Upを引用しているとして訴えを起こした裁判です。

参考としてBlurred LinesとGot To Give It Upを貼っておきますので、両者を聴き比べてみてください。

www.youtube.com

Got To Give It Up, Pt. 1

Got To Give It Up, Pt. 1

  • マービン・ゲイ
  • R&B/ソウル
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

(2015/09/30:動画サイトのリンクが切れてたのでリンクを貼り直しました。)

う~ん。似てるといえば似てるけど、あくまでそっくりさんってレベルですね。いちゃもんとか私念とかで訴えたってやつでしょ。

ロビン・シック側はメロディやコードが違うので両者は別の曲であると主張していました。 一方のマーヴィン・ゲイ側は音楽的構成要素のコピーによる著作権侵害、過去作品の盗用疑惑、ロビン・シック自身の素行、リリース当初のインタビュー映像を根拠として、ロビン・シック側の著作権侵害を主張していました。

なんだかマーヴィン・ゲイ側の弁護士がやり手だったために、うまく丸め込まれた気がしないでもないですね。

ちなみにこの問題、2013年の8月から続いていたそうです。

bmr.jp

ただ、この判決はフィーリングが似た感じがする曲を盗作だとする根拠とはならないと思います。あまりにも被告側ロビン・シックの都合に依存する部分が多いので、一般的なケースに当てはめられないでしょう。

曲のフィーリングとは何か?

我々は2つの曲が似ていると判断するにあたって、どういった要素を参照しているのでしょうか。

曲のフィーリングを形どる要素としては以下のようなものが考えられます。

  • ボーカルの声質、歌い方
  • リズムのパターンや強弱、早さ
  • 使用されている楽器や演奏スタイル
  • パン*1
  • エフェクトの使い方

たしかにBlurred LinesとGot To Give It Upとでリズムパターンやベースのスタイルが似通っている部分があります。BPM*2もBlurred Linesが121ぐらい、Got To Give It Upが124ぐらいなので、だいたい同じくらいでしょうか。そうなるとボーカルの歌い方もなんだか・・・って気もしますが、この辺からは主観によって意見が別れることでしょう。

つまりは、音楽的要素がいくつか相似していれば大体似たように聞こえてくるということです。

編曲が著作物となる可能性

現在、音楽のにおいて著作権の対象となっているのはメロディーと歌詞のみです。 編曲(アレンジ)について規定されているのは著作隣接権であり、これは著作物である曲を著作者の同意なしに改変できなくするというもので、これによって編曲者に使用料が入ってくるというわけではありません。

ですが、今回のような裁判が今後様々な場所で行われるというなら、動向次第では編曲者やエンジニアの仕事が著作権の範囲に含まれる可能性が出てくるやもしれません。

編曲者やエンジニアはミュージシャンによって生み出された曲に味付けしたり、気持よく視聴できるように調整したりする人たちです。 現在の法律では彼らの仕事は創造性のない作業とされているため、もし自分たちが手がけた音楽がヒットしたとしても、彼らに金銭的な恩恵はありません(知名度が上がって仕事が舞い込んでくることはあるでしょうが)

フィーリングという曖昧なものが法的に定義され、曲の雰囲気にも著作権が認められるとしたら、編曲者やエンジニアなどの裏方的な仕事が評価される可能性が増えるのではとも考えられるでしょう。

編曲の本(日本作編曲家協会・著)

編曲の本(日本作編曲家協会・著)

*1:聴覚上の音の配置

*2:Beats Per Minute:1分あたりの拍数